新しい技術は日進月歩です。広い分野に使われている各種フィルムは技術の進歩によって、より薄肉化が進んでおります。しかし、薄肉フィルムは張力を強く掛けられないため、搬送用ローラの慣性が大きいとフィルムとローラの密着性・同期性が悪く、フィルムに滑りによる傷が生じます。これを解消する製造技術として、生産ラインの中に使われている搬送用ロールやダンシングロールがありますがそれはかなりの重量物になり、高速で回転するローラの低慣性化が望まれております。ディムコではその低慣性化に挑み、結果、低慣性ロールが実験段階から生産ラインに適用されるレベルの段階になりましたので、関連事項に関して紹介いたします。
1.低慣性ロールの構造
本ロールは従来のロールのようにロール本体は回転しません。固定された中空軸端部から圧縮空気を入れると空気はロールの表面に放射状に開けられた小孔から吹き出します。そしてその圧縮空気によりロールの外径に挿入された薄肉スリーブが空気圧により拡径し空気中に浮上するため、この薄肉スリーブとスリーブの軸方向の動きを規制するサイドリングのみが抵抗なく軽く回転します。
低慣性ロール用薄肉スリーブ
低慣性ロールの外観
2.従来ロールに比べた慣性の比較
ディムコ開発の低慣性ロールは従来市場の各種ローラに比較し、回転慣性は1/45~1/10となっております。
3.使用空気量について
スリーブの浮上に必要な空気量はスリーブの直径、長さ、板厚と軸との締め代の関係、外部からローラにかける力との関係などにより変わります。
各種パラメータの差を含めた実験結果がまとまりつつありますので、詳細内容は個別にお問い合わせ願います。なお、低慣性ロールの使用空気圧は
0.4MPa以下を予定しております。
4.低慣性ロールの効果
低慣性ロールによるメリットは、製造ラインのスピードアップによる生産性向上です。一般にロール径、幅が大きくなると慣性が大きくなり回転上昇によりフィルムとロール間に速度差が生ずるので搬送速度を上げることは難しいが、低慣性ロールはフィルムに対して追従性が非常に良いので速度を上昇させることができます。その他のメリットとしては、クリーンネス、スクラッチレスが期待できます。