コンベヤベルトの走行安定対策―分割プーリについて

スチールベルトのディムコ、開発部の桑原です。

ロシアのウクライナ侵攻は泥沼化し、世界の食糧とエネルギー危機が私たちの生活にも迫ってきています。一日も早く事態が収束することを念じて止みません。

さて、コンベヤのベルトを安定走行させる技術として、VガイドおよびEPC(Edge Positioning Control)などがあることを私の前回のブログで紹介させていただきました。一方、スチールベルトのエッジを直接ローラー等で受けてガイドする構造はベルトエッジの耐久性が課題であることも指摘しました。
今回はこの点の解決に有力な方法がありますのでここに紹介します(注1)。

下の図は分割プーリを搭載したコンベヤの見取図です。プーリは円周上で4分割されており、プーリを構成する各々のプーリセグメントは中心シャフトに沿って滑動可能な構造です。
さてここでコンベヤベルトの動きを見てみます。コンベヤを走行させると、まずスチールベルトエッジはガイドピンローラで制御され、そのピンローラは力Fを受けます。
一方、プーリセグメントがベルトと接触しているとき両者は一緒に回転しますが、回転が進んでプーリセグメントがベルトから離れるとそれに組込まれたばねの復元力でプーリセグメントは中心位置に戻るようになっています。Fを受けるガイドピンローラはプーリセグメントがリニアガイド上を滑動する構造なのでその数値はごく小さい値です。
滑動構造を持たない通常の一体構造のプーリの場合、Fはベルトとプーリの摩擦力となってベルトエッジにダメージを与えてしまうのです。

分割プーリコンベヤ 見取り図
分割プーリコンベヤ 見取り図

以下に、分割プーリを搭載したコンベヤの試作評価結果を報告します。

 ベルト材質: SUS304 (ばね材)
 ベルト厚:  0.2 mm
 ベルト幅:  320 mm
 プーリ軸間距離:1000 mm
 プーリ径:  90 mm
 ベルト速度: 50m/min

 所見(総運転時間:330時間)
 1.ベルトエッジ損傷:なし
 2.ベルト蛇行量:±0.5 mm

以上、実用化の目途がつきましたので引続き改良設計・評価に注力してまいります。

注1:引用文献Tracking Systems for Conveyor Belts / Harry P.M.Clerx/2004



※関連ブログはこちら。続報のブログです。

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