ベルトは張らないと滑る、しかし必ず滑る?スチールベルトの謎 クリープとは

スチールベルトのディムコ、木曽川です。

11月7日の二十四節気(にじゅうしせっき)・立冬を過ぎてもここ横浜は暖かなまま。まだまだ冬の兆しがありません。
暑くも寒くも涼しくも、人間の手で環境を作れる現代は、本当に過ごしやすいものです。

さて、今回はクリープ滑りについて述べてみたいと思います。
『クリープ現象』あるいは『クリープ滑り』などクリープと名がついた言葉をよく聞きませんか。
AT車を運転していてドライブモードでブレーキペダルを踏んで停止している時、アクセルを踏まずにブレーキペダルを離すと徐々に車が進む。これはクリープ現象です。

硬くて強く見える金属、でも大きな力で引っ張れば切れてしまいます。 しかし、その金属が充分に耐えられる力を掛けていても、ある条件が長い間ずっと続くと、目に見えないほどゆっくりと少しずつ延びていき、やがて切れてしまいます。これもクリープ現象。

プラスチックなども種類にもよりますが、荷重をずっと掛けていると、徐々に変形が進んでいく。このような現象もクリープ現象と言っています。

AT車のクリープを除き、他は長時間一定の荷重を加えると永久変形する性質のことで、「這う」ようにゆっくりと進むことから、クリープ現象と言っています。
クリープとは英語でのろのろとした、徐々に進行する、ゆっくり動くという意味の「creeping」からきています。

さて、クリープの意味を理解したので、話はタイトルの内容に戻しましょう。

何がゆっくり動く又は進むのでしょうか。
ベルト伝動は、通常図1のように駆動プーリと従動プーリから成ります。
従動プーリを駆動プーリとは逆方向に引いてテンションを掛け従動プーリ側に負荷を掛けて駆動プーリ側を回すとベルトは上側が張り側、下側が緩み側となります。
この状態でベルトは従動プーリ側に動力を伝えます。
さて、ここでクリープが発生しています。

図1-ベルト伝動とクリープ滑り
図1 ベルト伝動とクリープ滑り

まず左の駆動プーリから見てみましょう。
ベルトは張られて(伸びて)駆動プーリに入ります。ベルトはプーリをグリップして回り、やがて緩み側へ回っていきます。しかし、伸びたベルトは緩み側に行くので縮まなくてはならず、ここで縮小が起こります。
ベルトのある地点は、最初にプーリに接触した位置から回転角が進むほど置いて行かれ、ずれることになります。反対に駆動プーリはわずかにゆっくりベルトよりも進むことになります。これをクリープと言い、これが起きる角度をクリープ角、この滑りをクリープ滑りといいます。反対に、従動側では縮んで伸びるので、ベルトはプーリより早く進みます。
このクリープは摩擦駆動の場合はどのベルトでも起こる現象で、ベルトの材質、形、負荷により滑り率は変化します。

それではスチールベルトを例に話しましょう。
スチールベルトは金属なので剛性が高く、滑り率は樹脂・ゴムベルトに比較して非常に低い値になります。
図2はラバーベルトとスチールベルトを比較した滑り率の表です。

図2-ラバーベルトとスチールベルトのクリープ滑り率比較
図2 ラバーベルトとスチールベルトのクリープ滑り率比較

赤線のように、同じ初張力(軸荷重の1/2)Fo=10N、トルク80N・cmの時、ラバーベルトの滑り率は0.1% に対し、スチールベルトは0.01%、言い換えれば、スチールベルト周長10000回転のうち 1回転分の滑りが生じますが、ラバーベルト1回/1000回なのでスチールベルトの10倍であることがわかります。
スチールベルトでは数ミクロンから数十ミクロンの単位で毎ベルト周回ごとに起こっています。
プーリの摩擦係数を上げることで軸荷重は減少しますが、ベルト伝動理論から見てもクリープ滑りをなくすことはできません。
また、軸間固定でテンショナーを入れて正転逆転する場合、クリープ角度が変わるので繰り返しのうちずれてきます。
スチールベルトは金属なので加熱して使用することが頻繁にあります。プーリ上で加熱冷却される場合も熱膨張による伸びと収縮を繰り返すので滑りになります。
ベルト機構では伸びたものは必ず縮む。その伸びの差が大きいほどクリープ滑りは大きくなる。この要因を排除すればクリープ滑りは極小になっていきます。
また、今ではその起こり方が均一で再現性があれば制御ソフトで修正、更に極小とすることができます。

通常、精密な送り機構を検討の場合このようなことを考慮しますが、単なる送り機構、コンベヤでは考慮しません。ただし、荷重、トルクが大きい場合プーリの摩擦係数を上げますが、クリープ滑りを考慮して摩擦材を検討する必要があります。
スチールベルトを摩耗させるような素材を使用するとスチールベルト材の鉄粉などのコンタミが発生し、トラブルの要因になります。

以上の内容、今後のご設計でお役立てください。

ご検討される時に質問したい場合のお問い合せにはフリーダイヤル0120-346-353があります。あるいは各種のお問い合わせ方法がありますのでぜひご利用ください。

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