前回に続き、今回はスチールベルトの種類をお話し致します。
(1)全周圧延タイプのスチールベルトとは
スチールベルトの用途は大きく分けて、動力伝動(伝達)用、搬送用に区分できます。
この全周圧延タイプは動力伝動用です。
動力伝動の良い例は減速機です。もちろん、加速も可能です。
ベルト伝動は原動側と従動側のプーリ径の比がそのまま減速の比になります。
したがって、減速の場合、原動プーリをより小さくしないと従動側のプーリ径が大きくなってしまいます。
例として、原動プーリ(d)を20mm、減速比(i)を5とした場合、従動プーリ(D)は、D=i・d=5×20=100mmになります。
スチールベルト伝動では原動プーリ側の径でスチールベルトの厚みが決まってしまうので、より薄いスチールベルトが要求されます。
このような場合、極限まで薄く仕上げた全周圧延タイプが使用されます。
現在の最も薄いスチールベルトは厚さが40μmです。
日本人の髪の毛の太さが80μm前後ですから、全周圧延タイプのスチールベルトはその1/2です。
大変薄いことがお解りと思います。
そして、その40μm時の推奨原動プーリ径は16mmです。i=5なら80mm i=10なら160mmです。
しかし、減速比(i)を10まで取ると、原動側のスチールベルトの巻き付け角度が小さくなり、より大きなテンション力が必要となり、注意が必要です。
このように、i=5を越える場合、又は、16mmよりさらに小さなプーリ径をご検討の場合にはぜひとも弊社にご相談ください。
全周圧延タイプのスチールベルトは次の図のように製造されます。
▲全周圧延タイプのスチールベルト製造工程
このように、溶接エンドレスに仕上げてからリング圧延を行っていますので、溶接部は他の母材部分と同じ機械的強度になり、小さいプーリでも使用可能となりました。
全周圧延タイプのスチールベルトとは、『アキレス腱であった溶接部を母材部と同じ強度にし、段差の無いスチールベルトに仕上げたベルト』です。
ちなみに、このベルトは『スチールベルト式CVT』と同じ種類です。
次回の『スチールベルトとは』シリーズは『溶接ベルト』についてです。
前回のスチールベルトとは (1) ベルトについてもご覧ください。
今後もスチールベルトのディムコを宜しくお願い致します。